所沢市の女性行政書士事務所

民事信託(家族信託)

2007年 改正信託法施行によりできた新しい信託の仕組みのことです。

「財産保有者(委託者)」が自分の財産を、「信頼できる人(受託者)」に託し、「利益を得る人(受益者)」のために、一定の目的に従って、管理・処分してもらう「財産管理の手法」のことをいいます。

信託銀行などが受託者となり資産運用などを行う商事信託とは異なり、受託者は家族等が担うことがおおいことから「家族信託」の名称でも知られています。

(※家族信託という呼び方は、一般社団法人家族信託普及協会が商標登録している名称です。)

 

生前の認知症対策から死後の相続対策までを長くカバーすることができ、依頼者の意思を法律の範囲内で最大限に実現するためのツールとして「民事信託」の活用が期待されています。

信託で可能になること

  • 委託者が元気なうちから判断能力低下時にも受託者に財産の管理・運用を任せることができる。
  • 不動産を信託すれば、委託者の判断能力が低下しても受託者の権限で売却や賃貸することが可能となる。
  • 信託財産の帰属先を決めることにより、信託財産については遺言同様の効果をもたらすことができる(信託する財産以外には及びません)。
  • 契約で決めることにより、何代にもわたる財産承継者の指定をすることができる。
  • 気がかりな家族に財産を定期的に給付していくことができる。
  • 気がかりな家族が亡くなった後の残余財産の帰属先の指定ができる。
  • 自社株式について、議決権と財産権を分離し、評価額の低いタイミングで後継者に株式を譲渡することができる。

などが考えられます。

民事信託(家族信託)の具体的活用事例

①親の認知症対策

Aさん(55歳)の母は5年前に亡くなり、その後実家では父が一人暮らしを続けています。

日々の生活も一人ではだんだん大変になってきたようです。振り込め詐欺やリフォーム詐欺の被害も心配です。一人暮らしができなくなったら施設に入居することは父も承知をしていますが、認知症になっていると不動産の売却ができないと聞きました。そこで信託の仕組みを利用しようと考えました。

信託活用のメリット

(1)父は受託者である長男に不動産管理(固定資産税の支払や修繕工事の契約・支払など)や預貯金の管理を行ってもらうことができ、安心して居住することができる。

(2)父が要介護状態などになり施設入居などで自宅に戻る予定がなくなった場合には長男の権限で売却し、売却金を信託し、父本人のために使用していくことができる。

(3)Aさんの死亡により信託契約は終了し、残余財産は長男に帰属させることですみやかな財産の承継ができる。

②相続対策

先祖代々の不動産を継いできたBさん(85歳)。

土地の一部は駐車場として貸しています。Bさんと亡き妻との間には2人の息子がいて、長男夫婦とは同居もしていますが、長男夫婦には子どもがいません。自分の亡き後、長男夫婦にはこの家に住み続けてもらいたいと考えていますが、長男・長男の妻とも亡くなった後にはこの土地を自身の血族である孫に継承してほしいと考えています。

信託活用のメリット

(1)委託者であり当初受益者の父は不動産の相続について先まで指定することで安心して生活ができる。また、貸駐車場の管理について、父が認知症などになった場合にも受託者である孫が代わって契約などを行うことが可能となる。

(2)父の死亡後は長男および長男の妻が亡くなるまで住み続けることができる。

(3)父・長男・長男の妻全員の死亡により信託は終了し、信託財産は孫に帰属させることで円滑な資産の承継が可能となる。

③福祉型信託

Cさん(77歳)には2人の子(長男・長女)がいます。長男には生まれつきの障がいがあり、現在は施設で生活をしています。Cさんの自宅不動産は、今後Cさんが自宅で生活できなくなったり、亡くなった後には売却し、そのお金は長男の今後の生活のために使っていってほしいと考えています。また、Cさん自身の今後の判断能力低下に備え、長女に金銭管理などをまかせたいと考えています。

信託活用のメリット

  1. 委託者であり当初受益者の母は自身の財産管理を長女に任せることができ、認知症などになった場合にも安心して生活ができる。
  2. 自身の亡き後は、長男のために定期的に金銭を給付していくことができる。
  3. 信託財産は受託者個人の財産とは区別されるため、長女の財産が差し押さえ等にあった場合にも信託財産は守られる。
  4. 長男の死亡により信託は終了し、帰属信託財産の一部をお世話になった福祉施設に帰属させることもできる。

多い事例として、以上のような活用法が考えられます。

 

うまく利用することができれば、これからの相続・認知症対策として非常に便利な方法です。

すべてのケースで信託が最善策とは限りません。家庭状況・希望内容により信託が不可能な場合もあります。また、遺言・後見・贈与その他の対応で解決できることもあります。

家族関係・財産内容を整理し、今後どのようにしていきたいのかをよく考えて、最適な方法を検討することが大切です。

信託に関するご相談お受けいたします。

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